エントリーシートは、これから働く会社へ宛てた『広告』つまり自分の売り込みです。
でも、たくさんの企業に書いていくにつれ、その内容が単調なものになり、ありきたりの文面になっていることが多いのではないでしょうか?
最悪このエントリーシート自体の記入作業自体が、ルーティン作業になってしまっていることもあります。
今回は特に『採用企業側として応募者がどれほど真剣に働きたいのかを知るために細かくチェックする項目』と言われる、エントリーシート内の自由記述である『志望動機』に関してです。
『何をどのように書けばいいのかわからない』という人たちのために、人事担当者として多くの採用試験に携わってきた経験を踏まえて、いかにライバルたちと差がつく説得力のある“志望動機の書き方”についてご紹介したいと思います。
企業の立場になって欲しい人材を想像し考えてみる
企業で求められる人物像はそれぞれ異なります。
なぜなら、世の中には無数の仕事があるからです。
しかし、志望動機を書く際の注意点は基本的には変わらないのです。
ここでは人事採用者が志望動機の、どのような点に対して注視しているのかを紹介解説したいと思います。
そのうえで、今後の履歴書やエントリーシートを作成する上でのヒントにしていただければ幸いです。
会社が気になる疑問点を明確化する
当然のことですが、なぜその会社を選んだかという理由は必ず明確に書くことです。
そのうえで採用担当者にインパクトを残すためにも、冒頭の一文は特に簡潔に明記を心がけてください。
採用担当者が気になる部分である『なぜ』の部分に明確な文章で答えましょう。
例えば、多数ある同業他社の企業の中から『なぜウチの会社を選んだのか?』という部分も採用担当者としては興味があるところです。
ライバル他社との比較なども含め、論理的に説明をできるようにすることは、応募するにあたって業界のことを細かく調査リサーチしていなければできません。
それらに関して明確な回答ができれば当然、採用担当者に好印象を与えることができるのです。
『やりたいこと』は、あまり具体的に書かず全体のバランスを重視する
その会社に入って『将来的にやりたいこと』や『実現したいこと』を書く機会も多いでしょう。
しかし、この部分をあまり具体的すぎた内容に絞って書いてしまうと後々マイナスの効果を生むこともあるのです。
仮にエンジニアリング系企業のエントリーした際に、「飲み水の確保に困っている地域の人のため、淡水化プラントの開発に携わりたくて応募しました」と書いたとします。
パッと見た感じでは、しっかり考えたうえで書かれた志望動機に見えますが、あまりに専門的な分野に絞られてしまっていいるため、採用企業側としては、この応募者に『それ以外の仕事を与えても熱意を持って取り組んでくれるのか?』といった疑問も発生する可能性もあります。
なぜならば、企業はひとつの仕事だけをしているわけではないのです。
そのため、応募の際ひとつの部分に着目してしまうのは、よくありがちなことです。
だからこそ最大限に注意しなくてはいけないところでもあるのです。
しかしその一方で、応募者の希望と会社の実態が実はかけ離れているという場合もありますので、やりたいことをあらかじめある程度の部分まで絞って、明言しておくことでミスマッチを事前に回避できるという利点もあります。
そのため、『やりたいこと』に関しては具体性のバランスを重視しながら記入する必要があるのです。
自分の能力を断言してはいけない!
エントリーシートでよく見かける表現として、『私は〇〇の能力がある』や『〇〇を通して御社に貢献できる』といった自己評価をしたPRがよく書かれがちです。
でも、よく考えてみてください!
その人の本当に能力が高いかどうかを判断するのは第三者なのです。
つまり、『御社に貢献できる』と書いたとしても、確実にいえることは、新卒が即戦力になることとは企業としては思ってもいなければ求めてもいないのです。
ここは正直に学生時代に頑張っていたことや力を入れていたこと、さらに言えば、人から感謝されたことなど、他人が見て自分を評価してくれたこと『他者の評価』を書くべきなのです。
目標は当然、中長期的なビジョン入れる
『やりたいこと』と類似しても構わないのが『目標』です。
しかし、『やりたいこと』にはないビジョンがここでは求めらるのです。
自分の目標にプラスして、世界情勢や日本経済など世の中の流れをふまえたうえ【現実】で、今後起こりうること【想定】に対して自分がどのような取り組みをしていきたいか【展望】をしっかりと説明できることで採用担当者に好印象を与えることになります。
たとえば、高齢化社会に備え自動運転の自動車開発にシフトしているメーカーに対して「カッコいいスポーツカーを設計したい」と書いても採用担当者の心に響かないでしょう。
自分が進みたい分野でその企業が生き残るために必要なこと、その中で自分はなにができるのかを常日頃から考えるようにしましょう。
シンプルがゆえに担当者の心に残る志望動機のテクニック
記入するフォーマットによっては文字数に上限があるので、ダラダラと書いても読む側としては言いたいことが素直に伝わらず印象に残りません。
そのため下記の4段構成を記入の際には必ず念頭に置いたうえで、端的に書くことができる習慣をつけてみてください。
志望動機のおさらい
上記で説明したことを参考に、実際に自分ならではの志望動機を書く練習をしてみましょう。
- 書き方1.自身のビジョン・目標
- 書き方2.そのビジョン・目標を抱くようになった、理由・きっかけ・経験を書く
- 書き方3.他業界、他社ではなく、その企業じゃないとだめな理由
- 書き方4.その企業で、具体的にどのような仕事をしたいのか
志望動機書:例文(新卒者の飲食業界の志望バージョン)
書き方1:自身のビジョン・目標
私は焼肉という外食を世間に浸透させていきたいと思っています。
特に“和牛”は日本が世界に誇る食文化で、小さい頃に家族で食べた味はいまでも忘れることができません。
日本の食習慣の素晴らしさを、改めて世界中の人に理解してもらいたいと思い応募させていただきました。
書き方2.そのビジョン・目標を抱くようになった、理由・きっかけ・経験を書く
私の父親は長距離バスの運転手をしており、月に数日しか父親が家にいない生活に慣れていました。
月に一度再会するとき、決まって家族全員で焼肉を食べに行きました。
みんなで炭火を囲むことで、家族がふれあえる団らんの時間の大切さに気づき、食事の時間を共有することの大切さと、それによって生まれる家族間の絆を、仕事を通じて多くの人に体験してほしいと思いました。
書き方3.他業界、他社ではなく、その企業じゃないとだめな理由
ファミリーレストランなどは食べるメニューも個々で分かれており、提供される時間にもばらつきがあります。
一方で焼肉は、家族同士で話し合いながら注文するメニューを決めたり、自ら調理するという過程があるため一体感が生まれます。
これは他の外食産業にはない魅力だと思います。
また、とくに御社では、個室やキッズルームを完備したり、キッズメニューが他社より豊富だったりと、子供連れの家族にやさしい店舗作りをされています。
書き方4.その企業で、具体的にどのような仕事をしたいのか
焼肉は値段の高い食べ物という認識が強いですが、ファミリー向けをターゲットにした業態も増えています。
より食事を楽しんでもらえるよう、家族連れでも気軽に入れるような明るく、清潔な店舗づくりに自分のアイデアを発信していきたいと思います。
上記のように、書き込みポイントを最初から分割しておくことで、各項目にしっかりとした内容に沿った形で、最終的には“なぜ”をしっかりと記すことができ、採用担当者に確かな印象を残すことができるでしょう。
まとめ:偽りのない熱意を志望動機では伝える
新入社員を採用するということは、ある意味新たな『家族のひとり』を迎え入れるような新鮮な感覚に似ているかもしれません。
当然、自分の本当の親兄弟とは違い、これまで皆さんが育ってきた環境や背景を先輩社員が知ることには限界があるでしょうし、簡単には理解してもらえないでしょう。
でも仮に入社後に長い期間一緒に働いていくともなれば、それはもしかすると家族以上に今後多くの時間を共有する人達にもなるのです。
新しい家族として迎え入れてくれる会社のためにも、テンプレを用いたありきたりの表現は今すぐやめて、偽りのない気持ちと熱意を伝えることはとても大切なことではないのでしょうか。