今回の相談者Hさんは、建設業の土木作業員として長年勤務していました。
下請け土木作業員という建設業界のピラミッド最底辺にいたと話すHさん。
そこには、建設業界全体をも含めた問題があったのです。
現在でも、建設現場の人手不足は解消されず、働き詰めになっており、仕事のために生きているような生活が多いと言われます。
そんな生活を脱却すべく、今回Hさんは転職を志しました。
この様な同じような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか?
慢性的な人手不足による高齢化
建設業全体が慢性的な人手不足ということは、以前から言われています。
なかでも土木作業を請負う会社には、一層厳しい人手不足、それに伴い現場作業員の高齢化が進んでいます。
なぜこのような事態になってしまったのでしょうか?
その理由はいくつか考えられます。
仕事のために生きているような生活
現在、日本では働き方改革が進められています。
また、新型コロナウイルスの影響もあり自宅勤務いわゆるテレワークが推進されています。
しかし、これらは建設業という業種には、ほとんど対応対策が難しい現状があります。
まして、建設業界の下請け会社の土木作業員ともなれば、一切蚊帳の外です。
未だに建設業の土木作業員は週6勤務で、休みといえば日曜日の週1日
現在、多くの企業が週休2日制の導入や残業時間の削減を進めています。
この様な企業が増え、当然のごとく若い人たちはそちらを選択するでしょう。
そのため、多くの建設業下請け企業では求人を出しても応募は皆無に近い状況です。
また、実際に勤務をしてみて改めて、週休1日という肉体労働から、入社後数ヶ月、早い人では数日で辞めてしまうことも多いと言われています。
せっかく新しい人手が入っても常に人手不足状態になっています。
土木作業を中心とする会社では年中、現場作業員を募集している場合も多く、それ以外の人手不足の対策として日雇い労働者として土木作業員を確保するといった事も少なくはありません。
これは、土木作業員に特化したしている部分も一部あります。
しかし、他の専門的な建設下請け会社でも、若手不足により次なる今後深刻化が考えられる問題も発生しています。
職人技の習得者の減少
単に建設業といっても、その工事の完成までには、多くの下請け会社を中心とした職人技が必要とされる特殊な内容の仕事が多くあります。
それらの多くは一長一短に、すぐに誰にでも出来るというものはほとんどありません。
一般には知られていない様な技術を必要とする職人技のマイナーなお仕事もたくさんあります。
それら多くの職種は、職人技といわれる一人前の職人になるまでには長い歳月が必要とされます。
しかし、若手がすぐに離職してしまう現状では、素晴らしい職人技の継承は困難で、職人技を習得した年長者が休みなく働くしかない状況になってきているのです。
女性が参入しにくい、男性主体の勤務環境
建設業の中でも現場作業に関しては、多くは男性を想定した上での求人関連がほとんどです。
昨今では、トラックなど運送業などで女性の活躍できる環境が整備されてきてはいます。
しかし建設業の一部では、下記の様な状況が続いており女性の仕事への参加を困難なものにさせています。
・多くの建設現場では重い荷物を頻繁に手で運んだりする機会が多く、体力が必要。
・足場など高所での危険な場面での力作業。
・トイレなどの労働環境を見ても男性が利用することが前提の設備。
それらを考えたると、女性の建設業への進出はまだ課題が多く現状では就職するのは難しい職種の1つになると思います。
若手でなくても現場作業員を辞めたくなる理由
建設現場作業員は若手以外でも辞めたいと思っている人は少なくはありません。
その理由は、若手作業員と同様に理由はいくつかあります。
すべては現場、、、やっぱり休みが少ない
若い人の建設作業員の離職でも述べたように、原則、建設現場での仕事は週6勤務で休みは日曜のみが当たり前の状態です。
その上、繁忙期や工期が間に合わないなど状況に応じて、日曜も仕事になることも当たり前と考えられています。
ただでさえ、若い人でも休みがほとんど無ければ、疲れは蓄積します。
これが、年長者となると更にその疲労の蓄積は大きいと考えられます。
本来の仕事と生活のバランスの崩れが起きていると言えるでしょう。
ではなぜ、この様なことが起きてしまうのでしょうか?
工期を最優先した作業計画
建設業の現場仕事には、必ず工期つまり完成日が決まっており、その工期に沿った作業計画が作成されています。
勿論、その作業計画はある程度の負担が少ない状況を基に作成されています。
しかし、大型の気候変動や昨今の新型コロナウイルスなど、想定もつかないことが起きた際はどうでしょうか?
その作業計画を大きく見直すか、休日返上で間に合わせるといったことになるのです。
その様な事態になれば、勿論その現場作業員は現場にいかなければなりません。
風邪などの安易な理由では休みをとることもできません。
それらは、体力的にかなりの負担を与えます。
作業計画を最優先にすることで、現場作業員は作業計画通りに終わらなければ残業、最悪の場合休日返上での現場作業をすることとなってしまうのです。
そのため、年齢に関係なく現場作業での疲労はどんどん溜まっていきます。
長時間の勤務拘束時間
建設業の現場仕事は朝がとても早いことが多く、家で休める時間が限られています。
例えば、現場が会社より1時間の距離とすると、朝礼が8時15分とした際、会社を最低でも7時には出なくてはいけません。
これはあくまで会社です。
この時間に会社に行くには、更に早く自宅を出なければなりません。
トータルすると、仕事前の移動時間は準備を含め平均2時間ぐらい、つまり自宅を朝5時台に出ることが当たり前だったと言います。
これは、あくまで出勤だけです。
退勤まで含めると、出退勤の移動のための拘束時間は優に4時間となってしまうわけです。
そこに、先程の様な残業が入ると、帰宅は平均20時頃となっていたと言います。
次の日の出勤を考えると、帰宅はあくまで寝るため。
「気が付けば・・、生活の中心が仕事になってしまった!」と感じる建設作業員も多い現実がそこにはあります。
さらに、移動時間の拘束はほとんどの場合、賃金が発生しない状況や残業が多いにもかかわらず、建設下請けの現場作業員は残業代も安いことが多いです。
精神的にストレスが溜まる
一般的な職業と比較しても、建設業は精神的にストレスが溜まりやすい職業の1つと言われています。
週1と休みが少なく、移動にかかる拘束時間を含めるとプライベートでの時間がなかなか取ることが難しく、ストレス発散をする機会が少ないからです。
この様な状況が改善されなければ、精神的にもストレスが溜まります。
夜帰ってくるのも遅く、朝も早いため、家族と過ごす時間や自分自身の趣味などをする時間も、他の職種と比べ極端に少ない現実がそこにはあります。
現場内での作業中にも、監督からのクレームが出てしまうことを避けるため、常に気を抜くこともできず、精神的にも苦痛を伴います。
そのため、体力的にも辛く、また精神的にも窮屈な状況の為、辞めたくなってしまう現場作業員の方が多いようです。
それでも、建設現場作業員を長く続けるためには
建設業のメリットとしては、多くが専門的な現場での仕事のため、自分の作業が終われば早く帰れるということもあります。
早く工程に沿った自分の作業予定を終わらせてしまえば、終わり次第帰れることもあり、用事がある際などは、自分で休憩を少なくして作業を調節などできる場合があります。
これは、あくまで専門的な分野に特化した現場作業員の方が対象となることとは思います。
早く帰れると思えば、いろいろな時間の使い方もでき、モチベーションもあがります。
その時間を利用して、自分なりの気分転換法や新しい趣味などを探してみることも良いかも知れません。
まとめ
建設業が好きだという方は勿論多いとと思います。
当然、私たちが生活していく上で、無くてはならない職業の1つだと思います。
しかし、現状で休みがなくてしんどいと思っている方は、自分を騙しながら無理に続けている状態ですので、やがては身体を壊してしまうことになるでしょう。
それでは仕事どころか、本来充実するべき私生活にも大きな支障をきたしてしまいます。
自分には向いていないと思う方は、何に比重を置くかなど考え、転職するのも1つの解決方法だと思います。
今回の相談者のHさんは、体調など将来のことを考え、また現状ではプライベート時間を利用したスキルアップの為の資格取得も難しいと考え、転職を決めました。
この様に、自分から無理に頑張りすぎず、別の解決策でもある転職することも考えても良いのではないでしょうか。
自分らしい仕事と生活の充実を考えることこそ、本当の「働き方改革」ではないでしょうか。